天然温泉は「温泉法」で認定された「温泉」と称するものですが、自然に湧き出たものではなく、掘削によって人工的にくみあげたものです。人工衛星を駆使した探査と二〇〇〇メートル前後まで難なく掘る掘削技術により、現在では日本中どこでも掘れば「温泉」が出るといわれているほどなのです。ですから、もともと温泉の痕跡すらなかった場所からくみあげた「温泉」は、日本人の頭の中にある温泉と別種のものである場合が少なくありません。
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太古の昔、その場所が海の底だった時代に陸封された「化石海水」と呼ばれる温かい水であることが大半なのです。私たちの常識では、温泉とは何らかの濃厚な成分が含まれている温水のことを指しますが、一九四八(昭和二十三)年に制定された「温泉」の定義の一つに、二五度以上であれば、成分の有無にかかわらず温泉と称するとの条項があるのです。一〇〇メートル地中を掘り下げると、二、三度地温が上がります。東京の年平均気温は28度前後ですから、五、六〇〇メートルも掘削すると、温泉法が認定する温泉が得られる可能性が大なのです。つまり地下を地球的規模で循環している温泉とは違って、地下のたまり水(化石海水)にストローを差し込んで吸い出しているようなもので、多くはやがて枯渇する運命にあるとも考えられます。とくに平成になってから、雨後のタケノコのように全国に乱造された温泉施設の多くは、東京の温泉と五十歩百歩のものです。竹下登元首相の「ふるさと創生資金」による地方自治体のいわゆる公共温泉(第三セクターなども含む)などはその筆頭格です。そうした施設のなかには、すでに温泉がほとんど得られなくなって、その多くを水道水で補っている天然温泉もあるにちがいありません。公表すると客が激減しますから隠しているだけなのです。北海道の太平洋に面したU町の町営温泉のように最初から川水を引き、川水100パーセントで「温泉」と称していたことが内部告発により明るみに出て、温泉の看板を下ろさざるをえなくなった公共温泉も実際にあるのです。犠牲になるのはいつも弱者(消費者)なのです。